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講演会
【ご報告】 2017年度 講演会
印刷会社が取り組むべきCSR戦略を学ぶ

―ビジネス戦略として企業ブランドの価値を高める―

環境保護印刷推進協議会では、11月22日(水)午後、東京・神田小川町の「明治大学紫紺館」で【2017年講演会】を開催し、「印刷会社が取り組むCSR戦略とは?―ビジネス戦略としての活かし方を考える―」と題した特別講演を聴きました。

この講演会は、当協議会が掲げている「サステナブル社会の実現に参画することで印刷会社としての社会的責任を果たす」という基本理念をさらに前進させるには、環境保護に関する行動規範を守り、顧客をはじめとする利害関係者の信頼を得ていくことが大前提になるとして企画したものです。<環境貢献>を柱に企業ブランドの価値を高める際に、根源的な企業の社会的責任(CSR)は欠かせないとの認識からです。

今回の講演会には会員をはじめ60余名が参加、講師としてお招きしたCSRコンサルタントの安藤光展氏(一般社団法人CSRコミュニケーション協会・代表理事)から、①CSRの基礎知識、②CSRにおけるトレンドと意識調査、③これからのCSRとは、④ステークホルダーの定義と認識、⑤ビジネス戦略としてのCSR、⑥印刷業におけるCSR視点のビジネス構築――の6項目について、有意義な解説を聴講することができました。

とくに、CSR活動が企業ブランドを高める手段=ビジネス戦略=としていかに有効かを中心に、企業を取り巻く昨今のCSRトレンド、価値を提供すべきステークホルダーとのコミュニケーションの重要性、顧客に向けての提案ツールとしての意義について学ぶことができ、貴重なひとときとなりました。

2017年度 講演会 講演の模様


安藤講師による講演要旨は以下のとおりです。

  1. CSRの概念を考えるとき、国際的定義として規定されている解釈をベースに理解する必要がある。そこでは「事業活動が社会に与える影響に対する責任」が強調されている。その影響には、ステークホルダー(利害関係者)を引き付ける組織能力やコミュニティー関係性、社員のモラル、生産性の維持など、競争上の優位性を確保する事項が含まれており、取り組むことで得られるメリットも多い。メリットを一口でいえば「リスクを減らし、ビジネス機会を創出することができる」であり、逆に「コストがかかる」というデメリットもある。前者については「正の影響の最大化」(機会創出)をねらい、後者については「負の影響の最小化」(リスク管理)をはかればいいということになる。
  2. CSRの真の目的を果たすためには、ステークホルダーとの価値創出に焦点を当てなければならない。「これからのCSR」では、ステークホルダー・エンゲージメントをより重視した戦略が必要になる。ステークホルダーの課題解決を目的としたステークホルダーへの便益第一の考え方で、すべての事業活動を通じて取り組んでほしい。「これからのCSR」を実行するには、自分の会社は何でCSRをやらなければいけないのかという大義を明確にしなければならない。
  3. 企業の至上命題/存在意義に焦点を当てたフレームワークとして、目的志向の「パーパス・オリエンテッド・アプローチ」がある。①行動(How)=戦略的な社会貢献活動など→②What(価値) =ステークホルダーの価値創造→③Why(目標)=競争優位性、企業価値の向上など→④Purpose(理念)=社会的な課題解決への貢献など、手段から目的へと考え方が高度化するので、後者ほど重視して取り組んでほしい。
  4. リスクマネジメントの観点からすると、関連テーマごとに事業の影響範囲およびステークホルダーを特定することが重要になる。と同時に、ステークホルダー間の利害関係も見極めなければならない。CSR活動の情報を直接の受益者以外にも伝える「ラスト・ワンマイル・エンゲージメント」が企業価値の向上には欠かせない。自社で強みがと思っていることと、ステークホルダーが魅力だと感じてくれていることとは異なる場合が多い。両者の価値が一致している場合は、エンゲージメントが生まれやすく、自社の組織や商品・サービスに対する評価の向上が見込める。
  5. CSRは、自社の企業価値を高めるだけでなく、ビジネスの新規創出や製品価値の向上に貢献できる可能性がある。そこで、顧客やコミュニティーのCSR推進にどうやって貢献できるかを考えながら、実行することがポイントになるだろう。自社のみならず顧客の企業価値も高めることができる。CSRを事業の中心に位置づけた本業での活動は、「事業活動においてビジネス価値と社会的価値を同時に創造できるアプローチ「CSV」(共有価値の創造)を可能にする。企業と地域社会が協働で価値を創出する「シチズンシップ」は、その一例である。
  6. 印刷業においても、CSR活動を通じてコミュニティーを育て、ステークホルダーとコミュニケーションし、身近な社会から必要とされる企業になってほしい。コミュニティーを育てることで、地域に会社の存在が知られ、積極的にビジネス展開できる市場が生まれる。中小規模の印刷会社の場合、各地域での事業展開が望ましい。コミュニティーを確立することによって、「顧客の取り合い」から「全体を潜在顧客に」へと転換できる可能性を見出せる。印刷業のCVS、つまり本業でのCSR活動にあっては「顧客ではなく市場を創造せよ」といいたい。

(文責・事務局)

更新日:2017年11月30日