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【ご報告】平成28年度定時総会併催 記念講演会
今こそ「環境価値をビジネス価値に高める」とき―定時総会《記念講演会》でブランディングの大切さ学ぶ―

印刷会社が実践しているの企業姿勢について市場や顧客から的確な評価を得るには、ブランディング活動がいかに大切か――そんな観点から、環境保護印刷推進協議会では6月29日午後、東京・神田小川町の「明治大学紫紺館」でおこなった平成28年度定時総会に合わせ、「環境価値をビジネス価値に高める―市場・顧客においていかれないために―」をテーマとする記念講演会を開催しました。

講師の西原弘 氏講師の西原弘 氏

当日お願いした講師は、CSR活動、環境対策、省エネ投資など持続可能な中小企業経営を指導、支援されている西原弘氏(有限会社サステイナブル・デザイン研究所社長/経営コンサルタント)です。会員企業の経営幹部、印刷関係者など約80名がこの日の講演会に参加し、印刷会社が成し遂げなければならない大命題に関して、専門家から有意義な提言を受けることができました。

講演では、顧客から認知されにくいを自社の経営にとって意義あるにもっていくには、環境対策マネジメントの域から脱して、高度なのレベルにまで高める必要があるという趣旨のもと、①市場の変化、顧客の要求をつねに研究する、②顧客や消費者の理解と信頼を得る、③認証基準などでエコ印刷の採用を動機付ける、④サプライチェーンの担い手として“安心”を提供する、⑤営業マン教育を徹底する、⑥環境対応の企業姿勢を経営方針に組み込む―― など、ステップを踏んで実践していくべきだとの教訓を得ました。

西原講師による講演の要旨は下記のとおりです。(文責編集部)

市場・顧客においていかれないために

1. 客層を見極め脈のある顧客に働きかける

「環境価値」とは環境負荷を何らかの対策、効率化で削減し得た分を指すが、それに対して、顧客や消費者がコストとして支払う意思があるかどうかが問題となる。環境対応をしているのは認めるけど、それでも価格は上げないで、品質は下げないでというのが、大方の利用者の本音だと思う。そんな現状のなかで、環境問題は企業にとって重要な経営戦略として位置づけられていない。どうしたらよいのか?

横軸を組織の規模、縦軸を環境配慮のビジネスプロセスへの組み込み度としたマトリックスをつくり、そこに顧客をプロットして分類し、脈のありそうな客層に提案していくとよいだろう。次のうち、いかに②の企業を探していくかが重要となる。

  1. 規模が大きく組み込み度の高いホットな客層は、環境=取引条件とみなしていて、すでに一定の調達基準をもっている。同じレベルで確立している取引先にしか発注しない。知ってもらえるよう働きかけなければならない。
  2. 規模は小さいが組み込み度の高い客層は、環境=経営戦略の意識があり、理解し寄り添ってくれる。顧客ごとにこちらから提案していくと効果的だ。
  3. 規模が大きいが組み込み度が低いコールドな客層は、環境=メリット(損得論)となっていて、熱心でなく考え方を変えてもらうのが容易でない。通用しにくい部分がある。
  4. 規模が小さく組み込み度も低い客層は、環境=能力(不足)の傾向があり、理解を得られず提案もなかなか受け入れてくれない。
2.「7つのステップ」で着実に推進していく

環境価値とビジネス価値との間には大きなギャップがあり、理解してくれる相手も少なく、しかも、そう簡単には(価格のかたちで)支払ってもらえそうにない。そうした相手に対してどう対処していったらよいのだろうか?それには以下の7つのステップを踏んで、環境価値をビジネス価値へと結びつけていく必要がある。

  1. 環境対応に取り組んでいる希少な印刷会社であることを、認証基準も含めて訴えていく。生き残りのツールとして使えるだろう。
  2. 認証基準に沿ってエコ印刷を標準仕様とし、普通に製造していることを主張する。顧客の理解を得るための有効策となる。オプション提案では、価格も高いに違いないと疑問視されるだけだろう。
  3. 自社独自の顧客向け説明ツールをつくる。他のセールスポイントと掛け合わせることで、答え自体をブランディングとする。
  4. 環境保護印刷について自信をもって説明できるよう、営業教育を徹底させ、顧客接点で信頼を得るための必須条件とする。認証基準の知識は環境価値の根拠となり、顧客にとっての意義付けは顧客価値となる。
  5. お役に立つために顧客を研究する。印刷物への関心、商品・サービスの内容を知っておくとともに、自社のサプライチェーン・マネジメントへの懸念に即答できなければならない。
  6. 調達基準の変更など市場環境の推移をつねにリサーチし、すでにきちっと対応していることを伝える。
  7. 環境配慮=環境対策のマネジメントから、環境経営=環境という視点による全社戦略へと高める。たんなるビジネスプロセス(やり方)から、経営者の意思として取り組む経営方針・経営戦略(なり方)へ引き上げ、環境にこだわっている自社としての理想像(あり方)を示す。
3. ブランディング活動に取り組む

こうした段取りのうえで、環境配慮型の経営を実践していかなければならない。広い意味ではステークホルダーへの対応が求められるが、より具体的な有効策として、環境貢献と経営戦略の統合、経営責任者のリーダーシップの喚起、組織体制の確立とガバナンスの強化などに取り組む必要がある。持続可能な資源・エネルギーの利用を重視すべきなのはいうまでもない。

顧客が自社に対して抱いている、環境に対応してくれているはずという事前期待に応えるためには、①取組みの実態をみせる、②取組み内容が客観的に評価されていることを、認証基準などで示す、③消費者、行政、公共機関、NGO/NPOなどチャンネル別に、環境規格の認知向上に努める、④個別に顧客価値を提案して、事前期待を積極的に形成する――といったブランディング活動を展開することが課題となる。

記念講演会の模様

更新日:2016年7月4日