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【ご報告】環境保護印刷推進協議会 創立10年記念行事
『日欧・印刷環境フォーラム』を盛大に開催

環境保護印刷推進協議会の創立10年を祝う記念イベント『日欧・印刷環境フォーラム』が、12月3日午後、東京・六本木の「国際文化会館」岩崎小彌太記念ホールでおこなわれました。この日のイベントには会員各位はもとより、非会員の方々を含む120名にのぼる多くの印刷関係者に参加をいただき、基調講演としての『スペシャルセッション』、特別講演に当たる『プレミアムセッション』、さらには、会員同士が集う『セレモニー&パーティー』と、盛り沢山の行事に有意義な時間を過ごしました。

第1部の『スペシャルセッション』では、イギリスから招いたマーティン・ユースタス氏(NPO法人Two Sides代表、Print Power Europe専務理事、Newvizion Consulting社長)から、「プリントメディアのサステナビリティと有効性の推進で、印刷と紙のビジネスを広げることはできるのか?」と題する格調高い講演を聞くことができました。

また、第2部の『プレミアムセッション』では、環境マンガ家として活躍されている本田亮氏(作家・カヌーイスト)に「ユーモアイラストで考える環境問題」について情熱的に話していただきました。

日欧・印刷環境フォーラム

日欧・印刷環境フォーラム

印刷メディアの有効性をアピールしよう

最初の基調講演でマーティン・ユースタス講師は、「印刷はパワフルなコミュニケ―ション手段であり、サステナブルなメディアでもある。そのような印刷メディアの有効性、重要性を訴えるために、社会や顧客に向けて積極的にアピールしていくことが大切だ」述べ、自身が主宰するTwo Sides(紙から印刷、物流に至るバリューチェーンを包括したサステナビリティを推進)と、Print Power Europe(欧州における印刷メディアの有効性を推進)の活動状況をそれぞれ紹介しました。
そして映像による実例を挟みながら、これまでの成果を強調し「もう一度、印刷メディアの需要を高められるよう、環境問題について真剣に考えていこう。印刷と紙は、語るに足る環境にやさしい素晴らしいストーリーをもっている」と結論づけました。

日欧・印刷環境フォーラム

人類は絶滅に追い込まれるかも知れない

「ユーモアイラストで考える環境問題」をテーマに、本田亮講師は「赤いはずのサハラ砂漠が何十キロにわたって白い砂漠になっていることにショックを受けた。聞けば、数年前は湖だった場所で、白く見えたのは貝殻だった。このとき地球と人類の将来は危ないと思った」と前置きし、自作のイラストを次々と放映しながら大要、次のように力説してくれました。

「人間は経済的な豊かさばかりを追いかけている。恐竜は隕石による気候変動で滅びたが、人間はまさに自分たちで隕石をつくっている。自分が悪いことをしていると気づいておらず、絶滅に追い込まれるかも知れない。地球のことをケアできる“エコロザウルス”になってほしい。ゴミを捨て続けると、ある日、地球に捨てられるだろう」。

日欧・印刷環境フォーラム

[ユースタス講演の要旨]
事実に基づく情報提供で理解してもらおう

われわれは複数のチャンネル(コミュニケーションの経路/手段)に対して、印刷メディアが効果的であることを伝えていかなければならない。印刷メディアは「自然の原材料(木材)を使っているではないか」というプレッシャーをつねに感じている。そうしたなかで、印刷メディアを売り込んでいかなければならず、マーケティングや営業のやり方を変える必要がある。ROI(投資収益率)に焦点を当て、それがいかに高いかを理論的に示しながら、どのようなチャンネルに有効であるかを教えていかなければならない。

「環境保護のために紙の使用を少なくしよう」「電子メディアを使っていこう」というネガティンブ・キャンペーンが数多く存在するが、紙と印刷メディアには環境にやさしいストーリーがあることを、製紙から物流までのバリューチェーンを受けもつ各プレーヤ-をまとめながら、強く訴える必要がある。

伐採された木材のほとんどは建材用、燃料用に使われていて、紙としては11%しかない。ヨーロッパでは70%の紙がリサイクルされ、包材の半分以上はその紙からつくられる。紙を完全にリサイクルできるなら、森林は守ることができるし、CO2も排出させない。このような事実を話すと、消費者には非常に驚かれる。電力の半分はIT機器やパソコンで消費され、その分、CO2の排出量も多いという事実を消費者にアピールすることで、議論を起こせる。

消費者はリサイクルすることは環境にやさしいし、紙についても再生可能な資源だとみているにも関わらず、リサイクルが実行されていないと“心理的” に思っている。電子メディアの方が環境にやさしいと考えていることも同じ発想だといえる。実際には70%以上の紙がリサイクルされているのだが、これこそアピールが不足している現状を物語っている。

印刷メディアの有効性についてポジティブ・キャンペーンを展開していかなればらないが、それには事実の検証が伴っている必要がある。「紙を印刷メディアとして使い過ぎている」という批判には、実際に、いかにサステナブルなビジネスをおこなっているかを説明している。請求書に象徴されるようなペーパーレスに関しても誤解を招いているが、木材を減らしCO2を増やしていることは決してないといった事実をもって、“上品に”警告していくことが重要だろう。「具体性がないかぎり消費者に誤解を与えるような行為(PR)をすべきではない」と通告することによって、批判内容を訂正してもらえるなど一定の成果を上げている。

印刷メディアが本来もつ価値についても説明すべきだ。教育・学習、識字率の向上に大きな力がある。電子ブックや映像スクリーンで本当の理解能力が高まるのか? 印刷メディアの方がはるかに有効だと考えられている。印刷メディアを読むことは心地よいとされ、読者にも好まれている。紙への記録は長期保存に効く。若い人たちも「重要な情報は紙の方がよい」という。

印刷メディアの有効性、魅力についてアピールするための情報提供(メッセセージ伝達)には、マーケティングの要素が必要となる。さまざまな産業のマーケティング担当者、コミュニケーション担当者に向けて、多様なチャンネルのなかでどのチャンネルに印刷メディアが有効であるかを選択できるよう教えなければならない。出版社にもバリューチェーンの一員として加わってもらうべきである。チャンネルを的確に組み合わせることで、広告の成果を考えてもらえるよう仕向けたい。

印刷メディアの効果について、コスト・パフォーマンス(投資効果)の観点で情報をきちんと構築することが重要である。マーケティング担当者に「自分のマーケティング手段が良かった」とよく理解してもらうことが、印刷メディアを使って商品が売れる道につながるからである。印刷会社は、これまでのような生産能力、価格で勝負するのではなく、個々の印刷メディアがもつ有効性についてアピールしなければならない。そうすることが、印刷会社にとっての望ましいビジネスなのである。

環境保護について、消費者はそれほど意識していないのかも知れない。だからこそ、紙メディアのサステナビリティと有効性に関して一貫して伝え続けることが重要だと強調したい。環境を守ることによって印刷メディアの需要が高まるという信念で、顧客が抱いている「印刷は古い」という印象を払拭してほしいと思う。

<文責事務局>

更新日:2014年12月8日