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講演会
【ご報告】 平成25年度定時総会・記念講演会
「いま、生態系に何を学ぶか」
― 環境新時代の適応戦略と危機管理 ―

環境保護印刷推進協議会では平成25年6月28日午後、東京・袋町の「日本出版クラブ会館」でおこなった平成25年度定時総会に合わせ、「いま、生態系に何を学ぶか」―環境新時代の適応戦略と危機管理―と題する記念講演会を開催、会員企業の経営者、経営幹部ら約70名が、第一線の学識経験者からエコカルチャー研究の最新の成果を聴いた。

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今回のテーマは、環境対応における危機管理の重要性が高まるなかで、産業、消費行動、ライフスタイルの中心にエコシステムを据える動きがクローズアップされてきたことを受け設定したもので、講師として、この分野の第一人者である門脇仁氏(著述・翻訳家、東京理科大および法政大学の非常勤講師)をお招きして、最先端の考え方を学んだ。

この日の講演では、『エココンシャス』な(環境を意識した)知と行動が、企業活動や文化形成に具体的にどのような変化をもたらしているかを豊富な実例に基づいて考えるとともに、資源・エネルギーを制約しながら質的拡大をはかっていく生き方を、公共の福祉や組織、個人の安定にどのようにつなげるかの貴重なヒントを探ることができた。
門脇講演の要旨は以下のとおり。

1. グローバルな環境意識の推移
リスクマネジメントが主体となる環境新時代を迎えている。環境に関するグローバルな意識は、それをビジネスや人づくりにまで適用させようという変革の時期にある。環境への配慮が産業やライフスタイルの中心になり、生態系を意識して生活していこうという考え方に変わってきた。生活の身近にまで『エココンシャス』が降りてきたといえる。経済の外側に置かれていた生態という自然界の価値を、経済のなかの総合的なシステムとして採り入れようという全体体系化が主流となってきたのである。

社会システムについても、グローバル社会をバイオスフィア(地球生命圏)のなかに位置づけるべきだという考え方になっている。例えば、CSR(企業の社会的責任)には、 (1)社会的、 (2)経済的に加えて、 (3)環境的という要素が、取り組みの基準として新たに追加されるまでになった。社会のなかの企業、生態系のなかの社会というように、パラダイムシフトの一大転換期にある。
現代は、 (1)危機管理、 (2)適応のための最適化モデル、 (3)生態系サービス――の考え方(知)を、産業やライフスタイルのなかに進んで取り込むべき時代になったといってよい。

2. 知っておきたい適応策と危機管理のメカニズム
成熟社会とは「物質消費の成長は諦めても、生活の質を成長させることは諦めない社会」(D.ガボール)であり、文化の成熟に伴って物質的にニュートラルな社会のことをいう。そこでの最大の課題は、いかに環境変化に適応し危機管理するかにある。うまくいかなければ、生産系のサービスすら受けられなくなる。

リスクとしては、因果の関係性が明瞭な構造的リスクと、不明瞭で予測し難い非構造的リスクの2種類があり、一定地域(公害、都市問題など)、広域(生態系汚染、自然災害など)、地球規模(気候変動、異常気象など)と、さまざまな領域で発生する。このうち定量的リスクは、損失余命×生起確率=リスク値の式で表せるため、比較的把握しやすい。化学物質などが生態系に負の影響をもたさす「生態系リスク」であっても、必要に応じてデータ取得、過程の検証、結果のモニタリングができれば評価がしやすく、管理も比較的容易である。
しかし、リスクについての一般的な認識は、客観的データと主観的データの総体からなっていて、きわめて定性的である。非構造的な未知性因子、恐ろしさ因子が加わっているために、例えば商品の買い控えが起こる理由ともなっている。経営者に対するリスクアンケート(経団連;2008年)によると、原材料調達や製品/商品供給の困難より、CSRの評価低下、ブランド力の低下、市民/消費者の不評・不買運動といった項目が上位にきている。定量的リスクだけでなく、定性的リスクも捉えておく必要があることがよくわかる。
企業は万が一の汚染や事故に備え、地域住民との日常的なリスクコミュニケーション(適切な情報公開、要望事項の対策など)によって、リスクを最小化する努力を続けていかなければならない。

3. エコシステム社会に生きる
エコシステム社会とは、生態系への配慮が倫理、価値観、文化に浸透している社会のことをいい、個と個、個と全体の関係性に基づくネットワーク社会となっている。地球環境の容量は有限という認識のもと、環境を全体観でとらえていく。システム同士の共通性に目を向け、人間自身がリスクを評価し管理していく必要がある。その関係性は、繋がりと隔たりの二つの意義をもっているのが特徴である。
個人主義と集団主義を融合させることにより、社会的行動からの社会貢献度が高まり、個と全体のバランス、統合からなる最適な領域がもたらされる。個人主義から組織的イノベーション、集団主義からは協業による成果が促がされる。「文化経営」に関しても、生態系から大きなヒントが得られると考えられる。

(文責編集部)

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更新日:2013年7月5日